正八面体一筆書きパズル

結城浩さんの数学パズル、
前回の解答の前にもう一問でてた。
[結] 2006年7月 - 結城浩の日記

まえおき

【一筆書き】 正八面体の辺を一筆書きします。 すなわち、正八面体の一つの頂点からはじめて、 すべての辺を巡り歩きます。 頂点は何度通ってもかまいませんが、辺は一度しか通ってはいけません。 また、すべての辺は必ず少なくとも一度は通らなければなりません(これが一筆書きの意味ですね)。 正八面体の一筆書きはそれほど難しくありません。 慣れている人なら頭の中でもできると思います。 また、どの点からはじめるか、どちらの辺に進むかを考えれば、 正八面体の一筆書き方法は何通りもあることがわかるでしょう。

【辺への矢印づけ】 さて、正八面体の一筆書きで、各辺をどちら向きに通ったか、 それぞれの辺に「矢印をつける」ことで表しましょう。 一筆書きでは、すべての辺は一度だけ通過しますから、 ある一筆書きの方法に対応して、すべての辺で矢印の向きが定まりますね。

【面への色づけ】 次に、正八面体の各面に着目します。 面を囲む辺は三本あります。それぞれの辺には矢印がついています。 三本の矢印を見たとき、あちらこちらの向きになっているかもしれませんし、 ちょうど面をぐるりと回る向きになっているかもしれません。 ぐるりと回る向きというのは、 すべての矢印の「先」が隣の矢印の「尾」に接しているような状況です。 矢印の先どうし、矢印の尾どうしは接していないということですね。 もしも、矢印が面をぐるりと回る向きになっている面があったら、 その面を「赤く塗る」ことにしましょう(右回り・左回りは問いません)。

問題
赤く塗る面が一つも存在しないような、 正八面体の一筆書き方法はあるでしょうか。 あるならその方法を示し、 なければそのことを証明してください。

これまた説明が難しそう…
答えは「ない」。


まず、
正八面体のすべての頂点は4つの辺が交わっている点である。
一筆書きをする場合、すべての辺を通らなければならないので、
ある一つの頂点から伸びる辺に「矢印」をつけるとすると、
必ずその頂点に矢印が向かってくる辺とその頂点から矢印が伸びる辺が2本ずつでなければならない。
向かってくる辺と伸びていく辺が1:3や3:1では一筆書きは成り立たない。


ここで、ある頂点を真上から見た図を考える。

頂点Oからは点A,B,C,Dへそれぞれ4本の線分があり、
そのうち2本は点Oが矢印の先になる向き、もう2本は点Oが矢印の尾になる向きにならなければならない。
そのパターンは以下の2通りだけ。
(Ⅰ)先になる向きの辺、尾になる向きの辺が隣り合っている

(Ⅱ)先になる向きの辺、尾になる向きの辺が向かい合っている


(Ⅰ)の場合、
A→O,O→Dという向きが出来てしまっているので、
三角形ODAが赤く塗らない面になるためには線分ADはA→Dの向きでなければならない。
同様に、三角形OBCについて考えると線分BCもB→Cの向きでなければならなくなる。

そうなると線分CDは、どちらの向きにしても点C,点Dのどちらかに矢印の先が3つ集まってしまう。
よってこのパターンでは赤く塗らない面が存在しない、ということは不可能である。


(Ⅱ)の場合、
A→O,O→Bという向きが出来てしまっているので、
三角形OABが赤く塗らない面になるためには線分ABはA→Bの向きでなければならない。
同様に、三角形OBCについて考えると線分BCはC→Bの向きでなければならなくなる。

ここでもう点Bに矢印の先が3つ集まってしまっている。
よってこのパターンでも赤く塗らない面が存在しない、ということは不可能である。


以上より、赤く塗る面が一つも存在しないような、 正八面体の一筆書き方法は存在しない。




…というカンジでどうでしょうか。
うーん、言葉だけで説明しようと思ったけど無理だった。。。