僕は今、恋をしている。

『就活は恋愛だ』とはよく言ったもので、
僕も今そんなことを思いながら日々を過ごしているわけです。


恋人候補として名乗りを上げ、
ラブレターを一生懸命書き上げて、気になるあのコに送る。
あのコからの返事が来る。今度会いましょう、と。
僕らは喜び勇んで彼女に会いに行く。
短いデートの時間で自分を精一杯アピールする。
たまには自分の『男としての魅力』を測るためのテストも受けたりしながら。
彼女からも尋ねられる。
「私のことをどれくらい知っているの?」
「私と付き合って、あなたはどうしたいの?」
「あなたは私のために何をしてくれるの?」
そしてデートから数日、彼女からまた連絡が来る。
「また会っていただけますか?」
もしくは
「もう来ないでください」
と。
僕らはそんな彼女からの返事をドキドキしながら待ち、
また会ってもらえることになれば大いに喜ぶし、
フラれてしまえば大いに悲しむ。


そんなことを繰り返しながら僕らは成長し、
自分をアピールする術を身につけ、
自分のことを気に入ってくれるコを探す。
そして何度かのデートを経て、最後はプロポーズ。
それを受けてもらえれば、ついに僕らの恋愛は結実するのだ。


僕らの中にはそういった自由な恋愛とは違う、
『お見合い』という方法をとる人もいる。
仲人さんに取り計らってもらい、たった一人のヒトとだけ、
特別に会わせてもらい、お話をする。
これもひとつの方法だ。
こちらは仲人さんに紹介していただいる手前、
一度決まった縁談をお断りすることなんかできない。
他のコとお付き合いしながら縁談を進めるなんてこともできやしない。


普通の感覚では、自由恋愛で色々挑戦しながら、
どうしても良い相手が見つからなかった場合にお見合いに、
となりそうだが、このケースではそうもいかない。
大抵は、最初から自由恋愛を選ぶか、お見合いをするか、の決断を迫られるのだ。


僕なんかの性格では自由恋愛でいきたい、と思うものだが、
なんせこの時期にすべての人にフラれてしまうと、一生独身になってしまう。
そんなリスクを考えると、お見合いさせてもらえるならお見合いに、
となってしまう。
しかし今のご時世、お見合いですら仲間内の競争があり、厳しい。
自分のお見合いしたいヒトとお見合いできるかどうかも、分からないのだ。


僕は、「どうせ自分はモテない人間だ」と思い、
自由恋愛を諦め、お見合いを選ぶことにした。
そう決意しながらも、軽い気持ちでラブレターを何枚か認めていた。
しかし、意外にもそのコたちからデートのお誘いを幾つか貰うことができたのだ。
何人かのコとデートをしたり、テストを受けたり。
そして結果を待つ。
また会ってもらえるかどうか。


これが、
とても楽しい。


あのコに会いに行く。
自分をアピールして、そして帰り、連絡を待つ。
フラれるかも知れない。
でもまた会ってもらえるかも知れない。
いつしか僕は連絡を首を長くして待つようになり、
携帯電話は手放せなくなった。


現在、お見合いも競争率が高く、希望のコとはお見合いさせてもらえなそうな状況。
そして自由恋愛もまだどうなるか分からない。
独身のままでこの春を終えてしまう可能性はまだまだ高い。


それでも僕は今、恋をしている。